白丈長しろたけなが)” の例文
女中。……家の女中は代々『鶴』だす。駒といふ女中はおまへん。……駒はてかけ(妾の事)はんだすやろ。……女中なら白丈長しろたけなが
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
紫のきれのさげ髪と、白丈長しろたけなが稚髷ちごまげとにて、しずかにねりいで、やがて人形使、夫人、画家たちをあやしむがごとく、ばたばたとけ抜けて、花道の中ばに急ぐ。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
堅油に艶をだした島田くづし、鼈甲の笄に白丈長しろたけなが——そこまでも見えてくると、彼女には、笑ふと絲切り齒が見えて、ちよいと片靨さへあつたやうに思はれる。
夏の女 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
帯をだらりに結んで、白丈長しろたけながを掛けた島田の女中は四五年の間何時いつも変らぬ同じ人だつたやうに思つてましたが、真実ほんたうは幾度か変つた別の女中だつたのかも知れません。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
島田まげ白丈長しろたけながをピンとねた、小凜々こりりしい。お約束でね、御寮人には附きものの小女こおんなですよ。あれで御寮人の髷が、元禄だった日にゃ、菱川師宣ひしかわもろのぶえがく、というんですね。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
幾らませてゐても、まだ十五の頭に白丈長しろたけながをかけた島田は重さうであつた。怒つてゐた父の顏色はだん/\和らいで來て、灰を見る眼よりも、お駒の頸筋を覗く眼の方がいそがしくなつた。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)