いゆ)” の例文
わがこの薬は、かしこくも月宮殿げっきゅうでん嫦娥じょうがみずから伝授したまひし霊法なれば、縦令たとい怎麼いかなる難症なりとも、とみにいゆることしんの如し。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
然るに学者が平生より養生の法を説きて社会をいましむることあれば、あるいはそのやまいを未発に防ぎ、あるいはたとい発病に及ぶも、大病にいたらずしていゆるを得べし。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ゆゑに前後不覚に渇する者能くこれを買ふべし、その渇のいゆるに及びては、玉漿なりとして喜びきつせしものは、と下水の上澄うはずみに過ぎざるを悟りて、痛恨、痛悔すといへども
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
石磴せきとうを登らむとする時その麓なる井のほとりに老婆の石像あるを見、これは何かとしもべに問へば咳嗽せきのばばさまとて、せきを病むものがんを掛け病いゆれば甘酒を供ふるなりといへり。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
作者としては充分な学殖がくしょくたっとき未来とをもった、若く美しい楠緒女史は春のころからのわずらいに、夏も越え、秋とすごしても元気よく顔の色もうつくしく、語気も快活にいゆる日を待ちくらして
大塚楠緒子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)