こん)” の例文
夢の中には、一こんの月があった。墨のごとき冷風は絶え間なく雲をそよがせ、その雲の声とも風の声ともつかない叫喚さけびがやむと、寝所のとばりのすそに、誰か平伏している者がある。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旭の光輝ひかりに照らされたる、人形の瞳は玲瓏れいろうと人を射て、右眼、得三の死体を見てめいするがごとく、左眼泰助を迎えて謝するがごとし。五体の玉は乱刃らんじんに砕けず左の肩わずかに微傷のこんあり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
玄徳は夢中にさけびながらその影を追って、前殿の廻廊まで走り出したが、そのとき宙天ちゅうてんこんの月がまりのように飛んで西山へ落ちたと見えたので、あっとおもてをおおいながらそれへ倒れてしまった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
月一こん。主従二人。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)