病付やみつ)” の例文
これが私の小説を書く病付やみつきで又「遊び」の皮切であったが、それも是も縁の無い事ではない。私の身では思想の皮一枚めくれば、下は文心即淫心だ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
若旦那柳絮はいつぞやなかちょうの茶屋に開かれた河東節かとうぶしのおさらいから病付やみつきとなって、三日に上げぬ廓通くるわがよいの末はおきまりの勘当かんどうとなり、女の仕送りを受けて
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
二百十日が来ると、馬のある家では、泊懸とまりがけ馬糧ばれうの萩を刈りに山へ行く。その若者が一人、山で病付やみついて来て医師いしやにかかると、赤痢だと言ふので、隔離病舎に収容された。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
夜々よる/\見廻った方がいと主人から言いつかりました、それにお手飼の犬とは存じませんで、檜木山の脇へわたくしが参りましたら、此の節の陽気で病付やみついたと見えまして、私に咬付かみつきそうにしましたから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)