留度とめど)” の例文
つづいて刷毛はけを使ってみたりたぼをいじってみたり、どこまで行ってこの奥方ごっこに飽きるのだか、ほとほと留度とめどがわからないのであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
老女笹尾を筆頭としてお供の女中残らずが、黒姫の裾野の怪旋風に両眼殆ど潰れたも同然、表方の侍とても皆その通りで、典薬が手当も効を見ず、涙が出て留度とめどが無かった。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
下町へ出るとどうしても思ったよりか余計にお金を使うだの、それからそれと留度とめどがない。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
が、そのときはもう全然ほかの興味に彼女は身をゆだねていた。雨の日のシャンゼリゼエに留度とめどもなく滑る自動車の車輪タイヤのように、彼女は自分の心頭しんとうがどこへ流れて行くかじぶんで知らないのである。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
木の葉のそよぐにも溜息ためいきをつきからすの鳴くにも涙ぐんで、さわれば泣きそうな風でいたところへ、お母さんから少しきつく叱られたから留度とめどなく泣いたのでしょう。お母さん、私は全くそう思いますわ。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
と言って涙を留度とめどなく流しました。
三人の百姓 (新字新仮名) / 秋田雨雀(著)
お銀様がこう言ってその両眼から留度とめどもなく涙を落した時に、お君は何と言ってよいか解らない心持になりました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは自分の腑甲斐ないことばかりではなく、過ぎにしいろいろのことが思い出されると、涙をハラハラとこぼしはじめて、やがて留度とめどもなく泣けて仕方がありません。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お銀様は留度とめどもなく涙が流れました。その涙を拭おうとすればするほど泣けてたまりません。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
というのは犬の声、愛すべきムク犬の声でありましたから、この声だけには、お君もその逆上のぼせて逆上せて留度とめどを知らない空想から、今の現在の世界へ呼び戻されないわけにはゆきません。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)