男性おとこ)” の例文
「そう聞けば聞くほど、私の心はあなたにひきつけられます。私はこの世の中で、たった一人のほんとの男性おとこを見つけたと思っております」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一芸を立て通すとなれば男性おとこの方でもそうに違いないが、殊に女性だとより以上に意志が強くないと駄目だと思います。
そういう多勢の女の親戚の中で、菅が皆から力と頼まるる唯一人の男性おとこであるということもよく想像せられた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
『誰も彼もが持っているものをお前へ強くくれたばかりだ』と。『お前は永遠の女性おんななのだから、永遠の男性おとこを見付け出すまでは、そういうことをしてもよい』
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「なぜと言って、あなたが、そんなに若い、強い、美しいあなたが、自分の男性おとこを捨てているから。あなたは勇士でもなく、剣も、猟も、琴も、女も、好きでないから」
(新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
妹は女学生時代から男性おとこのような娘だった。我儘わがままなかわりに継母でも誰でもかまわずしかり飛ばすという気性だ。総領の山本さんには、その真似まねは出来なかった。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ただ、濃い眉、ふとい鼻ばしら、嬰児あかごこぶし大もあるのんど男性おとこ甲状腺しるし——それだけは母のものではない、いて血液の先をたずねれば、大曾祖父おおそうそふ源義家のあらわれかもしれない。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思春期の処女おとめというものは、男性おとこのわずかな行動によって、衝動を受けるものであり、そうしてその処女が、愛と良識とに恵まれている者であったら、衝動を受けた瞬間、相手の男性の善悪を
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「貴女は優しい人ですが、何処どこ一箇処ひととこ男性おとこのようなところが有る——そこを気を着けなければ不可いけない」とその卜者えきしゃが言ったとか。そんなことまで言出した。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
男性おとこの心情なぞはそう理解されなくともい、仕事の手伝いなぞはどうでも可い、と成って来た。
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と復た豊世は力を入れて、真実男性おとこの要求を聞こうとするように、キッと叔父を見た。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もうすこし男性おとこの心情が理解されそうなものだとか、もうすこしひとの目に付かないような服装みなりが出来そうなものだとか、もうすこしどうかいう毅然しゃんとした女に成れそうなものだとか
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)