甲斐国かいのくに)” の例文
大菩薩峠だいぼさつとうげは江戸を西にる三十里、甲州裏街道が甲斐国かいのくに東山梨郡萩原はぎわら村に入って、その最も高く最もけわしきところ、上下八里にまたがる難所がそれです。
例えば甲斐国かいのくにの「カ」を「甲」と書きますが、実際古典にも甲斐国の「カ」は甲の字が大抵書いてあります。
古代国語の音韻に就いて (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
内の……内の……雅之まさゆきのやうな孝行者が……先祖を尋ぬれば、甲斐国かいのくにの住人武田大膳太夫たけだだいぜんだゆう信玄入道しんげんにゆうどう田夫野人でんぷやじんの為に欺かれて、このまま断絶する家へ誰が嫁に来る。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そこから武蔵国むさしのくにの境を越して、児玉村に三日いた。三峯山みつみねさんに登っては、三峯権現ごんげんに祈願をめた。八王子を経て、甲斐国かいのくにに入って、郡内、甲府を二日に廻って、身延山みのぶさん参詣さんけいした。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
甲府の近くにある国玉くにたまの大橋などは、橋の長さが、もとは百八十間もあって、甲斐国かいのくにでは、一番大きな、また古い橋でありましたが、この橋を渡る間に猿橋さるはしのうわさをすることと
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ここは、裾野すその人無村ひとなしむらからも、ずッとはなれている甲斐国かいのくに法師野ほうしのという山間さんかんの部落。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二四 村々の旧家を大同だいどうというは、大同元年に甲斐国かいのくにより移り来たる家なればかくいうとのことなり。大同は田村将軍征討の時代なり。甲斐は南部家の本国なり。二つの伝説を混じたるにあらざるか。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これより甲斐国かいのくに巨摩郡こまごおり……
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)