田辺たなべ)” の例文
天保七年の『広益諸家人名録』に田辺たなべ藩牧野家の臣海賊橋に住すとしてある。斎藤拙堂さいとうせつどうの文集に士徳の詩集『楓江集』の序が載せてある。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
予が現住する田辺たなべの船頭大波に逢うとオイオイオイと連呼よびつづくればしずまるといい、町内の男子暴風吹きすさむと大声挙げて風を制止する俗習がある。
前川虎造氏の誘引ゆういんにより和歌わかうらを見物し、翌日は田辺たなべという所にて、またも演説会の催しあり、有志者の歓迎と厚き待遇とを受けて大いに面目をほどこしたりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
岸本の恩人にあたる田辺たなべ小父おじさんという人の家でも、小父さんがくなり、姉さんが亡くなって
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
豊雄の姉が嫁にいっている先は、大和の石榴市つばいちという所で、田辺たなべ金忠かねただという商人であった。
しかし田辺たなべの町へほんのちょっと降りて見て、すぐに私はその横町に道頓堀と同じレコードの伴奏によって赤玉をしのばしめるであろうところの女給の横顔を認めることが出来た。
綴喜つづきの郡、田辺たなべの里に逗留の道庵先生は、健斎老の取持ちで、何もございませんがと言って、上方名物のよき酒に、薪納豆たきぎなっとうを添えて振舞われたものですから、大いによろこびました。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
水戸警察屯所とんしょ刑事・田辺たなべ剣三郎
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はこれから帰って行こうとする家の方で、自分のために心配し、自分を待受けていてくれる恩人の家族——田辺たなべの主人、細君、それから、お婆さんのことなぞを考えた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
二郎の姉が家は、二一三石榴市つばいちといふ所に、田辺たなべ金忠かねただといふ商人あきびとなりける。
「山城の田辺たなべだよ」