用箋ようせん)” の例文
そこで、私は机の上のかごに入れてあったホテルの用箋ようせんを取出して、そなえつけのペンで、彼女が岩山から見たという海岸の景色を描いた。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
総監は桐函きりばこの蓋をとって捜査課長の前に押しやった。その中には一通の角封筒と、その中から引出したらしい用箋ようせんとが入っていた。
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この娘は、自分がれいの運動の手伝いでへとへとになって帰り、ごはんも食べずに寝てしまってから、必ず用箋ようせんと万年筆を持って自分の部屋にやって来て
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
翌日痴川と別れてから、麻油はしかつめらしい顔をして暫く火鉢に手をかざしていたが、やがて用箋ようせんを持ち出してきて、小笠原宛に次のような手紙を書いた。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
歳暮の風呂敷包は元通り踏石の上にありながら、ヴヰラの扉には学園の用箋ようせんへ先生の太い万年筆の文字で
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
たぶん、せがれが、工場こうじょうやす時間じかんいたものとみえ、工場こうじょう用箋ようせん使つかってありました。
とうげの茶屋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
雅致のある支那風な桃色の用箋ようせんにそれがしたためてある。そんな親切なやりかたがこの池の茶屋へ客の足を向けさせるらしい。お三輪はそこにも広瀬さんや新七の心の働いていることを思った。
食堂 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
用箋ようせん薫物たきものの香をませた唐紙とうしである。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
木島君は午後三時頃あのカフェへ行って、飲物も命じないで、用箋ようせんと封筒を借りて、しきりと何か書いていたそうです。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そういって、黒川は、その四角な封筒をやぶって、中から四つにたたんだ用箋ようせんをひっぱりだした。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その封筒をのばして、はしをひらいた。そして中から用箋ようせんをつまみ出して広げた。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
事務机のまんなかに、克彦の用箋ようせんが一枚、キチンと置いてあった。
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)