瑠璃子るりこ)” の例文
瑠璃子るりこが、相手の顔を見ると、ハッとおどろいたように、紳士も瑠璃子の顔を見ると、ハッと顔色を変えながら、立竦んでしまった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
名前は瑠璃子るりこというのだが、中国筋の零落れいらく士族の娘で、当時十八歳、咲きそめた紅梅の様に、匂やかにも美しい乙女であった。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
瑠璃子るりこの印象にかさなるせいかもしれないと思う。しかし明朝、父忠盛の前でする答えはちゃんとはらにきめていた。
「君江さんは全く徹底しているわ。」とダンス場から転じてカッフェーに来た百合子ゆりこというのが相槌あいづちを打つと、もとは洋髪屋ようはつや梳手すきてであった瑠璃子るりこというのが
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
妾が、貴方のために、どんなことをしたか、どんなことをするか、それをお試しになるために、の自動車でいらしって下さい!瑠璃子るりこ
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
君江はカッフェーの仕舞際しまいぎわ瑠璃子るりこという女給に市ヶ谷へ立寄って伝言ことづけをするように頼んだのである。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
清盛は、自分ののみくだしたつばの音に、思わず、顔をあからめた。あたまの中に、瑠璃子るりこの顔がすぐうかんだ。六条洞院裏の遊女の寝すがたも、一しょに思い出されてくる。
瑠璃子るりこう名が、青年の臨終の床で叫ばれた以上、如何いかなる意味かで、青年と深い交渉があるだろうと思ったのは、自分の思い違いかしら。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
母のかげに、もうひとり、ひそむがごとく、乗っていた人を見ると、瑠璃子るりこであった。
十一になったばかりの瑠璃子るりこさんが、夫人の死の為めに受くる愛情生活の破産バンクラプシイを考えると、自分の悲しみなどは恥しいほど、小さいものだと思わずには居られなかった。
大島が出来る話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)