猿曳さるひき)” の例文
悪口あっこうくのに、(猿曳さるひきめ、)と云ったが、それで分った。けずり廻しとか、摺古木すりこぎとか、けだものめとかいう事だろう。大阪では(猿曳)と怒鳴るのかと思ったが。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
支那の万暦まんれき年中、毘陵びりょう猿曳さるひき乞児こじきがあって、日々一ぴきさるれて、街坊まちに往き、それに技をさして銭を貰っていたが、数年の後にその金が集まって五六両になった。
義猴記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「兎も角、木賃宿の番頭に頼んで、猿曳さるひき兄妹の隣の部屋へ泊めて貰いましたよ」
(もし、御寮人様、)とじっと顔を見て、(どうしましたらよろしいのでございましょう、)とすがるようにして言ったか言わぬに、(猿曳さるひきめ、われゃ、おんなに、……畜生、)とわめくがはやいか、伸掛のしかかって
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)