牡牛をうし)” の例文
そのおぢいさんのくびには、これまで、例のふしぎな黒い牡牛をうしのくびにつけてあつた綱がまきついてゐました。
湖水の鐘 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
でなきや、牡牛をうしに私を突かせてもいゝし、跳ね馬の背後うしろに立つてゐてひづめを私の胸にぶつけさしてもいゝわ——
種牛といふのは性質たちが悪かつた。もつとも、多くの牝牛めうしの群の中へ、一頭の牡牛をうしを放つのであるから、普通の温順おとなしい種牛ですら荒くなる。時としては性質が激変する。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
どどォ※どどォ※と牡牛をうしのやうな波が、この岩にぶつかつて、真白になつてとびちるとき、その辺にうろうろしてゐるなら、岩の面にたたきつけられて、すぐ死んでしまふだらう。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
嗚呼あゝ神よ、若き人は女の生みたる子は、御供ごくう牡牛をうしよりも御心みこゝろかなふべし
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
右手のやぶがガサ/\と音がしたので、急いで銃を取り直すひまもなく、いきなり目の前に、牡牛をうしのやうな大きなひぐまがあらはれ、後ろ脚でスクッと立上がり、まつかな口に、氷のやうなきばをあらはし
熊捕り競争 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
牡牛をうしのごとも、あどけなく
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
その若ものをやとつてゐる百姓は、あくる朝おきて牛小屋へいつて見ますと、寝てゐた間に、見つけない大きな黒い牡牛をうしが一ぴきふえてゐたので、ふしぎに思ひました。
湖水の鐘 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
『愛のこもれる草の食事は、憎惡のじれるえたる牡牛をうしのそれにまさる。』
「おや。」と思ふ間に、からだがすつかり牡牛をうしになつてしまひました。
湖水の鐘 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)