片辺かたほとり)” の例文
旧字:片邊
これ相州西鎌倉長谷はせ村の片辺かたほとりに壮麗なる西洋館の門前に、今朝より建てる広告標なり。時は三伏さんぷく盛夏の候、あつまり読む者のごとし。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二十間も座敷の数有る大構おほがまへの内に、唯二人の客を宿せるだに、寂寥さびしさは既に余んぬるを、この深山幽谷の暗夜におほはれたる孤村の片辺かたほとりれる清琴楼の間毎にわたる長廊下は、星の下行く町の小路より
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ポーデンゼーの片辺かたほとりに、今も僅かに名は残るルックブルヒ。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
十歳とおばかりの頃なりけん、加賀国石川ごおり松任まっとうの駅より、畦路あぜみちを半町ばかり小村こむら入込いりこみたる片辺かたほとりに、里寺あり、寺号は覚えず、摩耶夫人おわします。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やっぱり昨夜ゆうべ御覧なすった、あれが元からの旦那でね。ええ、しかも、ついこの四五日前まで、久しく引かされて、桜の宮の片辺かたほとりというのに、それこそ一枚絵になりそうな御寮人で居たんですがね。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)