片方かたっぽ)” の例文
「あなたの顔こそ面白い。何んですね、何うしたんです、あなたの片方かたっぽの眼はちっとも動かないじゃありませんか。硝子ですか」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
甚「おや血が出た、身寄か親類が来ると血が出るというが己は身寄親類でもねえが、何うして血が出るか、おゝ恐ろしく片方かたっぽから出るなア」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
百姓家二三軒でもうなわてだが、あすこは一方畑だから、じとじと濡れてるばかり。片方かたっぽに田はあっても線路へ掛けて路が高い。ために別に水らしい様子も見えん。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
味方は味方と板行はんこうで押したように考えないで、敵のうちで味方を探したり、味方のうちで敵を見露みあらわしたり、片方かたっぽづかないように心を自由に活動させなくってはいけない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
片方かたっぽは野犬だぜ」というと、友人は無言にうなずいて、互に顔を見合せた。
一日一筆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『まあ、片方かたっぽでよかったのに、私もよっぽど馬鹿な——。』
青白き夢 (新字旧仮名) / 素木しづ(著)
と考えて居りますと、片方かたっぽでは片手でさぐり、此処こゝあたり喉笛のどぶえと思う処を探り当てゝ、懐から取出したぎらつく刄物を、逆手さかてに取って、ウヽーンと上から力に任せて頸窩骨ぼんのくぼ突込つッこんだ。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)