燕雀えんじゃく)” の例文
みすみす一粒の芥子種からしだねが春陽に乗じて生長するがごとく、ついに空中を舞うの燕雀えんじゃくさえもその枝にくうに至るの勢いとなれり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
あの小冠者こかんじゃを、いつまで籠の鳥の質子ちしと思うていると間違いまするぞ。今川家のひさしに巣喰うて満足しておる燕雀えんじゃくではおざらぬ。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時々あわて者が現われて、一昂奮こうふんから要路の大官を狙ったりなどするのは、畢竟ひっきょう大鵬たいほうこころざしを知らざる燕雀えんじゃくの行いである。
青年の天下 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
燕雀えんじゃくいずくんぞ大鵬たいほうこころざしを知らんやですね」と寒月君が恐れ入ると、独仙君はそうさと云わぬばかりの顔付で話を進める。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「卿等、碌々人に拠って事をなすの徒。燕雀えんじゃくいずくんぞ、大鵬の志を知らんや、か——吾に、洛陽負廓田ふかくでんけい有らしめば、あによく六国の相印をびんや、か」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
さりとて未だ遂げざる大望の計画を人に向って話さば人は呆然ぼうぜんとしてその大なるに驚くにあらざれば輾然てんぜんとしてその狂に近きを笑わん。鴻鵠こうこくの志は燕雀えんじゃくの知る所にあらず。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
燕雀えんじゃくいずくんぞ鴻鵠こうこくこころざしを知らんや」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「くだらぬことを問うものかな燕雀えんじゃくなんぞ鴻鵠こうこくの志を知らんやだ。——貴様はもうおれの身を生擒いけどっているんじゃないか。四の五のいわずと都へ護送して、早く恩賞にあずかれ」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)