為尽しつく)” の例文
如何なる不遇の詩人も、爾の懐に憂をることが出来る。あらゆる放浪ほうろう為尽しつくして行き処なき蕩児も、爾の懐に帰って安息を見出すことが出来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
新聞記者としてアラン限りの悪い事を為尽しつくした揚句あげく、大正十一年の下半期に到って、東京中の新聞社からボイコットを喰った上に、警察という警察
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
其間そのあいだにも酒や博奕ばくちや女狂いや、悪い道楽は何でも為尽しつくした。うなると、二人が仲にも温かい春の続こう筈はない。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
薬餌やくじまじない加持祈祷かじきとうと人の善いと言う程の事を為尽しつくして見たが、さてげんも見えず、次第々々に頼み少なに成て、ついに文三の事を言いじににはかなく成てしまう。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
時代をり時代に順応して、八十幾歳の長い生涯に複雑な経歴をけみしつつ、しかも平凡に、そのために更に自由に身を処して、未亡人として思うままの享楽も為尽しつくして、晩年は二