点睛てんせい)” の例文
けれども、明治十八年建設当初に、河鍋暁斎かわなべぎょうさい落合芳幾おちあいよしいくをしてこの館の点睛てんせいに竜宮の乙姫を描かせたほどのきらびやかな眩惑は、その後星の移るとともに薄らいでしまった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そして、それからどのくらい経ってか、彼はこの情景の点睛てんせいともいうべき声を聞いたのである。
嘘アつかねえ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
其奥に筋骨を剥き出した黒部五郎岳が火山のような長い美しい裾の斜線を見せて、秀麗な円錐形に聳えているのがこの大画幅に点睛てんせいの妙を極めて人を叫ばせずには置かない。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
この一冊は、私の構想の上に、正に画竜点睛てんせいであった。同時に私は、東海道を見たくなった。袖日記の主が歩いた道をこの足で踏み、彼が見た松並木を私のこの眼で見たくなった。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
と、それだけは画龍がりょう点睛てんせいを欠いたものと嘆じるのだった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
艶つやとした黒髪に、その花のえた紫色がよくうつって「点睛てんせい」といいたいほどひきたってみえた。甲斐は満足そうな眼で、ややしばらく宇乃をみまもった。宇乃は微笑した。
この山の噴出がなかったならば、尾瀬沼も尾瀬ヶ原も出現することなく、この勝地も恐らく名もない谷間の窪地たるに過ぎなかったであろう。それだけに此山は尾瀬の風景に点睛てんせいの妙を極めている。
画龍がりょう点睛てんせいを欠く」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
点睛てんせいも忘れなかったわけである。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
点睛てんせいも忘れなかったわけである。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)