潮時しほどき)” の例文
さうすると円朝ゑんてうさん、その死骸しがいういふ潮時しほどきであつたか知らないが、流れ/\て塩原しほばらまへ桟橋さんばしへ着いたさうだ。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
潮時しほどきづした後は、退屈なものなのだと、ゆき子は汚れた手拭ひで、ゆつくりからだを洗つた。煤けた狭い風呂場のなかで、躯を洗つてゐる事が、嘘のやうな気がした。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
潮時しほどきを見て、平次はお勝手口から外へ出て見ました。もう眞夜中近いでせうか、木戸を押すと狹い路地で、その向うの黒く小さい家から、女の凄まじい啖呵たんかが闇に響くのです。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
はゝさまに直樣すぐさまいでくださるやう、今朝けさよりのおるしみに、潮時しほどき午後ごゞ初産ういざんなれば旦那だんなとりめなくおさわぎなされて、お老人としよりなきいゑなれば混雜こんざつはなしにならず、いまいまでをとて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「隱したつて隱し了せるものぢやない。言ふ潮時しほどきに言つて了はないと、後で後悔するよ」
首尾よく俺を言ひくるめた積りで居たらしいが俺は潮時しほどきを見て居たのだ。