すす)” の例文
私も早速起き上って当り前なら口をすすぐところでありますが、口も漱がず眼をこすりながらお経を読むという訳です。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
口をすすぐために河原に下りていた戸田老人がわめいたものである。動物のえる声のような野太い叫びで呼んでいた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
ちょうどそれは毎朝の口をすすいだり、歯をみがいたりするのと同じに、それをしないと気持が一日散漫であった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
にわかに立って、口をすすぎ、手をきよめて来て、状を拝し直した。主君の御一族とあれば、手紙といえども、その人の前にあるのと同じ礼儀をるのであった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「火ぁでらたもな。おれぁ二度起ぎで燃やした。さあ、口すすげ、ままでげでら、楢夫。」
ひかりの素足 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「どうです河合さん、そう閉じこもってばかりいないで、気晴らしに散歩して見ませんか」と、浜田に元気をつけられて、「それではちょっと待って下さい」と、この二日間口もすすがず
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
顔を洗うことは出来ない、僅かに茶碗に一杯の水で口をすすいで小屋に入る。宗忠は飯を炊き始める。水桶に移すと、今度は宗平が飯を炊く、見ると湯の沸いた中へ、一升ばかりの粟を入れる。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
とにかくみんな寝巻ねまきをぬいで、下に降りて、口をすすいだり顔を洗ったりしました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ごめん——と口の中で云って彼は流れのそばにしゃがんだ。その小さな川の水をすくって口をすすぎ、顔を洗った。深山の水は切れるような冷たさであった。洗われた肌には爽昧そうまい巒気らんきが浸みとおった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
道太は楊枝ようじをつかいながら、山水のような味のする水で口をすすいだ。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)