清洌せいれつ)” の例文
娘は手水盥ちょうずだらいに、川から引いた清洌せいれつな水をみ、甲斐かいがいしく虎之助の洗面の世話をしながら、この付近が栗の名産地であることを語った。
内蔵允留守 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私は昨日から非常なかわきをおぼえ、どんな悪水でも一滴得られたらと、それこそ、渇くような思いで地上の清洌せいれつな流れを瞼に思い浮かべた。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
はりの上に板をならべ、南東の方向に面した祭壇に供物が盛りあげられている。さかきの代りには水松おんこの小枝を用い、白いご幣が、黒いほど濃い緑葉のなかに清洌せいれつな対照であった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
えびのいる清洌せいれつな小川の流れ、それに緑の影をひたす森や山、河畔に咲き乱れる草の花、そういうようなもの全体を引っくるめた田舎いなかの自然を象徴するえびでなければならない。
田園雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
たとえようもなく清洌せいれつな純粋な漢の国土への愛情(それは義とか節とかいう外から押しつけられたものではなく、おさえようとして抑えられぬ、こんこんと常に湧出わきでる最も親身な自然な愛情)がたたえられていることを
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)