浴客よくかく)” の例文
先生が昨日きのうのように騒がしい浴客よくかくの中を通り抜けて、一人で泳ぎ出した時、私は急にそのあとが追い掛けたくなった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その時何か話して笑いながら、店の前を通り掛かる男女の浴客よくかくがあった。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
……梅子事すえの弟をれてとうさわ福住ふくずみへ参り居りそうろう処、水害のため福住はなみに押し流され、浴客よくかく六十名のうち十五名行方不明ゆくえふめいとの事にて、生死の程も分らず、如何いかんとも致し方なく
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かれてへやを出るときはたいらであったが、階子段はしごだんを降りるきわには、台が傾いて、急に輿こしから落ちそうになった。玄関に来ると同宿の浴客よくかくが大勢並んで、左右から白い輿を目送もくそうしていた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)