浩蕩こうとう)” の例文
しこうして彼らを送りし船は、すでに去りて浩蕩こうとうの濤にとりこにせられ水烟渺漫びょうまんうちに在り、腰刀、行李こうりまたその中に在りて行く所を知らず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
私たちの舟はまたの音もゆるく緩く波上に遊んでゆく、流れはもはや急ではない、大江たいこう浩蕩こうとうとしたさざなみである。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
その略に曰く、乾坤けんこん浩蕩こうとうたり、一主の独権にあらず、宇宙は寛洪かんこうなり、諸邦をして以て分守す。けだし天下は天下の天下にして、一人の天下にあらざるなり
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
私の疲れた視神経には、あの石段の全体がまるで浩蕩こうとうたる光りの海のやうに見えた。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
皇恩浩蕩こうとうとも書いてある。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)