流蘇ふさ)” の例文
前面の、木造で物置に似た屋根にめぐらした流蘇ふさは、幅三フィートの青い布で、一フィートごとに半分程裂け、風が通るようになっている。
セルギウスが横から見た時、長老は微笑みながら右の手で法衣の流蘇ふさをいぢつて、相手の男と話をし出した。その男は隊外将官の軍服を被てゐる。
左に少年の下半身かはんしんも見える。黒猫も始めは変りはない。しかしいつか頭の上に流蘇ふさの長いトルコ帽をかぶっている。
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ずぼんは黒のカシミアである。沓足袋も黒い。足に穿いてゐるのは長靴と舞踏沓とのあひの子のやうな物で、それに黒い絹糸の大きな流蘇ふさが下がつてゐる。
十三時 (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
図483は戸口の上にかける流蘇ふさ、図484は五インチの距離をおいて繩のが一つ下るように撚った、藁繩である。
菊は一番奥のがうすべに、中程のが濃い黄色、一番前のがまつ白な花びらを流蘇ふさの如く乱してゐるのであつた。
舞踏会 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
僕は食事をすませた後、薄暗い船室の電灯のもとに僕の滞在費を計算し出した。僕の目の前には扇が一本、二尺に足りない机の外へ桃色の流蘇ふさを垂らしていた。
湖南の扇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
のれんの器用なつくりようがそれである、これは戸の前に流蘇ふさのように下っていて、風通しがよく、室内をかくし、そして人は邪魔物なしに通りぬけることが出来るという、誠にいい思いつきである。
花は真紅しんく衣蓋きぬがさ黄金おうごん流蘇ふさを垂らしたようである。実は——実もまた大きいのはいうを待たない。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
庇についた紫の流蘇ふさが、煽られたやうにさつと靡くと、その下から濛々と夜目にも白い煙が渦を卷いて、或はすだれ、或は袖、或は棟の金物かなものが、一時に碎けて飛んだかと思ふ程
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ひさしについた紫の流蘇ふさが、煽られたやうにさつと靡くと、その下から濛々と夜目にも白い煙が渦を巻いて、或はすだれ、或は袖、或はむね金物かなものが、一時に砕けて飛んだかと思ふ程
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)