流竄りゅうざん)” の例文
ここにおいて兵を出して諸国を併呑へいどんせんとし、欧羅巴洲大いに乱る。文化十二年諸国相はかりてポナパルテをとりこにして流竄りゅうざんし、連年の兵乱を治平せり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
流竄りゅうざん。そういう言葉が彼にはすぐ浮ぶのだ。だが、彼は身と自らを人生から流謫るたくさせたのではなかったか)
苦しく美しき夏 (新字新仮名) / 原民喜(著)
太刀たち持つわらべ、馬の口取り、仕丁しちょうどもを召連れ、馬上そでをからんで「時知らぬ山は富士の根」と詠じた情熱の詩人在原業平ありわらのなりひらも、流竄りゅうざんの途中に富士を見たのであった。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
離散、流竄りゅうざん、いずれも悲境に沈んでいた宮方のあいだでは、いつのまにか、道誉の名が、敵人ながら、理解のある、たのもしい同情者として、つよく記憶されていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつて彼から辛辣しんらつ滑稽こっけいな点を指摘されたそれらの偉大な魂は、彼が遠くへ流竄りゅうざんの身となった今となって、彼の方へ身をかがめて、親切な微笑を浮かべながら彼に言っていた。
これがありのままの状勢である。ああてて流竄りゅうざんのうきめを見る必要はないではないか。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
初めて学問的に研究して世にあらわしたバジル・ホール・チャンバレン Basil Hall Chamberlain 氏の祖父に当る Captain Basil Hall の率いた英吉利イギリス船が帰航の途に聖ヘレナ島に立寄って船長の口から流竄りゅうざん中の那翁に沖縄島の話を
くに識者の国防的観念に、一大刺激を与えたるもの、実に露国の北辺を侵擾したるに拠る。けだし露国の警を報じたるは、明和八年(千七百七十一年)露国西比利亜シベリア流竄りゅうざん者、波蘭ポーランド人アウスよりはじまる。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)