なくな)” の例文
旧字:
新吉お賤の逃去りましたのはもとより不義淫奔いたずらをしていて名主様がなくなると、自分達は衣類や手廻りの小道具何ややを盗んでいなく成ったに相違ない。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一人ならず二人欺くんじや! 一方には悔悟して、それが為に又一方に罪を犯したら、折角の悔悟の効はなくなつて了ふ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
鶴枝というこれもなくなりました二人は、私が京橋で乞食の爺さんに逃げられた時分、ホトホト自分の境涯に愛想を尽かしてしまい、もう落語家はやめようかと相談にいったときも
初看板 (新字新仮名) / 正岡容(著)
今松とちがって親はあったが、海老団治の師匠の梅雀ばいじゃくは三年前になくなり、それ以来の二度の師匠を持たず、独立で商売をしている境遇の寂しさも、今松には相触れるものがあった。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
私は外に何も苦労といふものは無い、唯これだけが苦労で、考出すと夜も寝られないのです。外にどんな苦労が在つても可いから、どうかこの苦労だけはなくなしてしまひたいとつくづく思ふのです。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)