江戸児えどッこ)” の例文
旧字:江戸兒
と御維新以来このかた江戸児えどッこの親分の、慶喜様が行っていた処だ。第一かく申すめの公も、江戸城を明渡しの、落人おちうどめた時分、二年越居た事がありますぜ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
掏摸の野郎と顔をならべて、似而非えせ道学者の坂田なんぞを見返そうと云った江戸児えどッこのお嬢さんに、一式の恩返し、二ツあっても上げたい命を、一ツ棄てるのは安価やすいものよ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さて、その色にも活計かっけいにも、寐起ねおきにも夜昼の区別のない、迷晦朦朧めいかいもうろうとして黄昏男と言われても、江戸児えどッこだ、大気たいきなもので、手ぶらで柳橋の館——いや館は上方——何とかへ推参する。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
江戸児えどッこはこの味を知るまい、と乗合のおんなの移香を、たのしみそうに、歯をスーとって、片手であごを撫でていたが、車掌のその御注意に、それと心付くと、俄然がぜんとして、慄然りつぜんとして、はだ寒うして
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何でも不便ふびんだ、可愛いと思うほど、手荒く取扱って、癇癪かんしゃくを起してね、横頬よこッつらりのめしてやりさえすりゃ惚れた奴あ拝みまさ。貴方も江戸児えどッこじゃあがあせんか。いえさ、若山さんの小主公わかだんなでしょう。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いや、その顔色がんしょくに似合わない、気さくに巫山戯ふざけ江戸児えどッこでね。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いや、江戸児えどッこの医学士め、すてきなものを囲ったぞ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
番太の菓子をかじった江戸児えどッこである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)