気色きしよく)” の例文
旧字:氣色
学校へつたら、「偉大なる暗闇くらやみ」の作者として、衆人の注意を一身に集めてゐる気色きしよくがした。戸外そとへ出様としたが、戸外そとは存外寒いから廊下にゐた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
判事はあの欝陶うつたうしい部屋で、あの気色きしよく悪い人間の死をおとづれることを避ける為には、少くない金をもをしまなかつた。婚礼と新築祝ならいつでも行くんだけれど、俺は病人や葬式は真平だ。
公判 (新字旧仮名) / 平出修(著)
これをくと、もあらむ、と面色おもゝちした坊主ばうず気色きしよくやゝやわらいで
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
威張りくさつたりする姿は、無性に気色きしよく悪く感ぜられた。
サクラの花びら (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
けれども、おとひゞきもない車輪しやりんが美くしくうごいて、意識に乏しい自分を、半睡の状態でちうはこんで行く有様が愉快であつた。青山あをやまうちへ着く時分には、きた頃とはちがつて、気色きしよくが余程晴々してた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)