気懈けだる)” の例文
旧字:氣懈
笹村は友人の医者に勧められて、初めて試みた注射の後、ちょうど気懈けだるい体を出来たての蒲団に横たえてうつらうつらしていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
下界は隈なくしろがねの光にあふれ、妙なる空気は爽やかにも息苦しく、甘い気懈けだるさを孕んで、薫香の大海うみをゆすぶつてゐる。
「なんの、まだ朝までにはだいぶある。常ならば、これしきの山道、苦にもせぬが、この二、三日は風邪かぜ気味か体が気懈けだるうて歩くと息がれてならぬ。悪い折にぶつかったものよ」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日がそろそろかげり気味であったので、このうえ二三十町もある道を歩くことが、二人には何となし気懈けだるい仕事のように思えた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
日に日に気懈けだるそうにみえて来るおゆうのなまめいた姿や、良人に甘えるような素振が、母親には見ていられないほど腹立しくてならなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
目が始終うるんで、手足も気懈けだるそうであった。その晩も、近所の婦人科の医者へ行って診てもらうはずであったが、それすら億劫おっくうがって出遅れをしていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お増は昨夜ゆうべの睡眠不足で、体に堪えがたい気懈けだるさを覚えたが、頭脳あたまは昨夜と同じ興奮状態が続いていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
浅井を送り出してから、お増はまた夜の匂いのじめついているような蒲団のなかへ入って、うとうとと夢心地に、何事をか思い占めながら気懈けだるい体を横たえていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
夜がけるにつれて、表通りの売出しの楽隊のはやしが、途絶えてはまた気懈けだるそうに聞えて来た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
みんなは食べ飽きて気懈けだるくなったような体を、窓の方へ持って行って、夕方の涼しい風に当った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
体が気懈けだるく頭心も痛かった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)