気咎きとが)” の例文
旧字:氣咎
すこしは気咎きとがめがするようで、幕間まくあいにはうつむきがちにしていたが、見物が「鎌子だ」といって視線をむけても格別恥らいもしなかった。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そして、軽い気まぐれに、遊山ゆさんの足のついでに、こうして、まぎれこんでいるような自分たちが、悪いような、済まないような、気咎きとがめを、ひそかに感じた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
枯葎かれむぐらを手探りで、墓から迷って出たように、なお夢心地で、潜門くぐりもんを——何となく気咎きとがめがして——そっと出ると、覚えた路はただ一筋、穴の婆さんのあたりに提灯ちょうちんが一つある。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうして、これは芸術にならないかしらと時々思いましたが、一方にそれは芸術の邪道であるというような、宗教カブレらしい気咎きとがめもしましたのでそのままに圧殺しておりました。
涙香・ポー・それから (新字新仮名) / 夢野久作(著)
気咎きとがめに、二日ばかり、手繰り寄せらるる思いをしながら、あえてくのをはばかったが——また不思議に北国ほっこくにも日和が続いた——三日めの同じ頃、魂がふッと墓を抜けて出ると、向うの桃に影もない。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、それでも、天幕テントの正面からじゃあ、気咎きとがめがしたと見えて
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)