母者人ははじゃびと)” の例文
こんどこそは、まじめに暮してくれるよう、わしも悪いところがあったとは思うが、母者人ははじゃびとへの心配もこれを最後にしてもらいたい……。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
どれもこれもていたりがたくけいたりがたき腕白顔わんぱくがおだ。さだめし、屋敷やしきへかえったのちには、母者人ははじゃびとからお小言こごとであろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことに母者人ははじゃびとあきれ半分に感心し、セニョルの誠実相解あいわかった! と古風に手を打ったりして、あとはすらすらと事が運び、間もなく神の意思に花が咲くといった経路だ。
ははは、不見識だといわるるか。ハテ、実は母者人ははじゃびとに生きうつしのそこもと、これからはまたお艶のお腹さまとして拙者にとっては二つとない大切な御隠居、そのお人に頭を
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
かれこれするうちに柏木貨一郎さんが養母とともに見える。三枝のお嬢さんお綾さんには母者人ははじゃびとのおびくさんが附いて見えられる。二階で落ち合って蕎麦そばを食べて見合いをされた。
「俺にもお前は懐かしい。母者人ははじゃびとのような気持がする。俺はお前の云う通りになろう」
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
母者人ははじゃびとにも、ようようお年、この後は正行をおいつくしみ下されたように、御自身のおからだを御いたわりくださいまし
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
食えるほどえいことがあるかいや。いねの持って生れた食いぶにじゃ、気兼がいるかいや。母者人ははじゃびとがまんじゅが食えなんだのもぶにがなかったんじゃろ、誰も皆ぶにを果さにゃ死ねんといや
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
「何もおらは驚きはしない。けれど母者人ははじゃびとは、びッくりなされた。——あやまるならおらのおふくろ様に謝るがいい」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「留守たのむぞ。中村の母者人ははじゃびとへ、何ぞの便りを怠るな。舅姑御しゅうとごたちへよしなに。……よいか、それから」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孫兵衛の母者人ははじゃびとイサベラ様はマリヤの笄とともに、その異国の人の血をひいてきたお方でございます。ほんとに円満な、聖母そのままな、慈愛の深いお方でした。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お聞きあそばしたか、母者人ははじゃびとは、なんぞ思い違いをなされたのでございましょうが」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わしの母だ。——祝言の席にはお迎え申さなかったが、わしが妻をめとったことを、天地の間で、誰よりも、誰よりも、蔭ながらよろこんでいて下されているに違いない中村の母者人ははじゃびとだ……」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『このふた晩ほど、続いて、死んだ母者人ははじゃびとの夢ばかり見ている。そろそろおふくろの迎えが近づいて来たのかも知れない。……だから、貴様とこうして語るのも、そう長い間の事ではない気がするのだ』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「では母者人ははじゃびと、行って参ります」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)