死期しご)” の例文
あの美貌で剛気な武士のこれが死期しごまでの品だろうか。伝右衛門はひょっと、そぐわない気がしたが、二日の晩の彼を思いだして
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
洋一はあんな看護婦なぞに、母の死期しごを数えられたと思うと、腹が立って来るよりも、かえって気がふさいでならないのだった。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
吸筒すいづつが倒れる、中から水——といえば其時の命、命の綱、いやさ死期しごゆるべて呉れていようというソノ霊薬が滾々ごぼごぼと流出る。
誠の親馬鹿といふので有らうが平癒なほらぬほどならば死ねとまでもあきらめがつきかねる物で、余り昨今忌はしい事を言はれると死期しごが近よつたかと取越し苦労をやつてな
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なぜ死期しごの近い病人の体をしらみが離れるように、あの女は離れないだろう。それに今の飾磨屋の性質はどうだ。傍観者ではないか。傍観者は女の好んでえらぶ相手ではない。
百物語 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
死期しごが今日にも明日にも来るかもしれないのですから、あなたのことだけは安心して死ねますようにと思いましてね、いろいろな空想も作って、仏様にもお祈りをしたことだったのですよ
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
『ひとつ、この後の馳走として、死期しご引導いんどうを頼みまするぞ』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)