此頃こないだ)” の例文
此頃こないだもネ、お俊姉さんのは催促髷さいそくまげだなんて、皆なでサンザン冷かしました。ですから姉さんは結っていらっしゃらないんですよ」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そう言えば、叔母さんはたお出来なさいましたんでしょう……どうも此頃こないだから、そうじゃないかッて、老婆ばあやとも御噂をしていましたよ」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「僕かい」と原は苦笑にがわらいして、「僕なぞは別に新しいものを読まないさ。此頃こないだ英吉利イギリスの永田君から手紙が来たがね、お互いにチョンまげ党だッて——」
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「お俊ちゃん、毎晩画を御習いですか」と稲垣はお俊の方を見て、「此頃こないだ習ったのを見て、驚いちまいました。どうしてああウマく描けるんでしょう」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ホラ、此頃こないだ、雪の降った日が有りましたろう——ネ。あの翌日でサ。私が河蒸汽で吾妻橋あずまばしまで乗って、あそこで上ると、ヒョイと向島に遭遇でっくわしました。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
此頃こないだ、ある先生が——諸君は菓子屋へよく行そうだ、私はこれまでそういう処へ一切足を入れなかったが、一つ諸君連れてってくれ給え、こう言うじゃないか」
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おやじおれもおめえ此頃こないだ馬を買った覚がある。どうだい、この馬は何程どのくれえ評価ねぶみをする——え、背骨の具合は浅間号に彷彿そっくりだ。今日この原へ集った中で、このくれえ良い馬は少なかろう
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そう……好く生ったことね」と言ってお雪も摘取りながら、「福ちゃん、此頃こないだ姉さんと約束したもの……あれを書いておくれナ。母親おっかさんのところへ手紙を出すんだから——」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私共の二番目のせがれが、あれで子供仲間じゃナカナカ相撲すもうが取れるんですトサ。此頃こないだもネ、弓のつる褒美ほうびに貰って来ましたがネ、相撲の方の名が可笑おかしいんですよ。何だッて聞きましたらネ——沖のさめ
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
此頃こないだも、馬流へ行った時、正公のところへ寄って、正公ちったあ上げて貰いやしたかね、と聞いたら、弱ったよ、今月は五十銭も上るかと思ったに、この模様ではお流れだ、と言ってこぼしていやした
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
此頃こないだも斎藤書記官に逢いやした時、おめえは今いくら取る、と言いやすから、九円になりやしたと言うと、九円? 九円も取るか、と大層喜んでくれやして、九円取れればいいだろう、と言いやすのさ。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)