款待顔もてなしがお)” の例文
「叔父さん達は御風呂は如何いかがですか」と豊世は款待顔もてなしがおに、「今日は、郷里くにへ帰る人の御馳走に立てましたところですが——」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ネブ茶を香ばしく入れましたから、持って来ました」とお種は款待顔もてなしがおに言て、吾子わがこと弟の顔を見比べて、「正太や、叔父さんにもいでげとくれ」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
とお島は客を款待顔もてなしがおに言った。この若い細君は森彦の周旋でかたづいて来た人で、言葉づかいは都会の女と変らなかった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と森彦が款待顔もてなしがおに言出した。彼は宿の小娘を呼んで、御客様に踊を御目に掛けよ、老婆おばあさんにも来て、三味線しゃみせんを引くように、と笑い興じながら勧めた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「岸本さん、火でもきましょう」と岡は款待顔もてなしがおに言って、画室の片隅に置いてある製作用のふちを探しに行った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私は自分の年とったことも忘れて、いろいろと皆を款待顔もてなしがおな太郎の酒をしばらくそこにながめていた。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
とお力は款待顔もてなしがおに言って、お三輪のために膳、箸、吸物椀すいものわんなぞを料理場の方から運んで来た。
食堂 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こんな話をしながら、お倉は吸付けた長煙管の口を一寸袖でいて、款待顔もてなしがおにお種の方へ出した。狭い廂間ひあわいから射し入る光は、窓の外を明るくした。すだれ越しに隣の下駄職げたしょくの労苦する光景さまも見える。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
牧野は主人役と女房役とを兼ねたという風で、何か款待顔もてなしがおに画室のすみでゴトゴト音をさせていた。この光景ありさまを見たばかりでも岸本には「巴里村」の気分が浮んで来た。彼は岡と差向いに腰掛けた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「さア、肉も煮えやした」と細君は給仕しながら款待顔もてなしがおに言った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
地主の顔には始めてかすかなえみが上った。隠居は款待顔もてなしがお
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と細君は款待顔もてなしがおに言った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)