楷子段はしごだん)” の例文
えんから足をぶらさげれば、すぐとかかとこけに着く。道理こそ昨夕は楷子段はしごだんをむやみにのぼったり、くだったり、仕掛しかけうちと思ったはずだ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鏡の中には、二階へ上る楷子段はしごだんの側面を始として、向うの壁、白塗りのドア、壁にかけた音楽会の広告なぞが、舞台面の一部でも見るように、はっきりと寒くうつっている。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
どうするか見ろと、寝巻のまま宿直部屋を飛び出して、楷子段はしごだん三股半みまたはんに二階までおどり上がった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何だか二階の楷子段はしごだんの下の暗い部屋へ案内した。熱くって居られやしない。こんな部屋はいやだと云ったらあいにくみんなふさがっておりますからと云いながら革鞄をほうり出したまま出て行った。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「何ですか」と馬尻ばけつげた三四郎が、楷子段はしごだんしたから云ふ。女はくらい所に立つてゐる。前垂だけが真白だ。三四郎は馬尻ばけつげた儘二三段のぼつた。女はじつとしてゐる。三四郎は又二段のぼつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その玉子を四つずつ左右のたもとへ入れて、例の赤手拭あかてぬぐいかたへ乗せて、懐手ふところでをしながら、枡屋ますや楷子段はしごだんを登って山嵐の座敷ざしきの障子をあけると、おい有望有望と韋駄天いだてんのような顔は急に活気をていした。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)