棕梠縄しゅろなわ)” の例文
旧字:棕梠繩
盆栽でよく見かける恰好のいい黒槍の一尺ほどのものが、棕梠縄しゅろなわで枝をたわめられたまま岩間に生えている。植木屋の仕業に相違あるまい。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
そのおそろしい剛力ごうりきに、空井戸の車はわれて、すさまじく飛び、ふとい棕梠縄しゅろなわ大蛇おろちのごとくうねって血へどをいた影武者のからだにからみついた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
谷窪の家には、湧き水の出場所が少し変ったというので棕梠縄しゅろなわ繃帯ほうたいをした竹樋たけどいで池の水の遣り繰りをしてあった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
広い野原のまん中に大きな平石があって、それを引きのけて見ると下に穴があり、一本の棕梠縄しゅろなわの綱が垂れている。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
見ると、の香のにおう法被はっぴの腰に、棕梠縄しゅろなわを帯にむすんで、それへはさみをさした若いいなせな植木屋である。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
胡麻穂というのは黒竹の小枝の葉をふるい、それをそろえて仕上げる垣根だった。仕上りはすだれ文様になり、どうぶちは青竹でおさえ、垣の上は割竹でかさを作り棕梠縄しゅろなわで編みこんだものである。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
舟板から水箒みずぼうきやもやいの棕梠縄しゅろなわまでおろしたばかりの真新しい舟だった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)