梨花りか)” の例文
彼の地の劇界で、この極東の、たった一人しかなかった最初の女優に、梨花りかの雨に悩んだような風情ふぜいを見いだして、どんなに驚異の眼を見張ったであろう。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
悄然しょうぜんとしてしおれる雨中うちゅう梨花りかには、ただ憐れな感じがする。冷やかにえんなる月下げっか海棠かいどうには、ただ愛らしい気持ちがする。椿の沈んでいるのは全く違う。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
苦々にがにがしげに張飛はいった。その顔つきで思い出した。近頃、南苑に梨花りかが咲いて、夜は春月がそれに霞んでまたなくうるわしい。時折その梨苑をさまよう月よりも美しい佳人が見かけられる。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一度び笑えば百媚ひゃくび生ずといわれた美貌も、すっかりやつれ果て、長い黒髪をがっくり横たえて、頭を上げるのもやっとというその姿は、まさに、梨花りか一枝いっし春雨はるあめぶ、という風情であった。
「夢にまで見た梨花りか一枝、こう易々と手に入ろうとは思わなかった」
武道宵節句 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
梨花淡白柳深青 〔梨花りか淡白たんぱくにしてやなぎ深青しんせい
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
舟橋を渡れば梨花りかのコブレンツ
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
梨花りか一枝。」
HUMAN LOST (新字新仮名) / 太宰治(著)
『春ならば、梨花りかの一
梨花りか春帯雨はるあめをおぶ
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)