梁上りょうじょう)” の例文
何だい、お前さん、病人なら病人と最初から言ってよこすがいいじゃねえか、隠れ忍んでいると、梁上りょうじょうの君子と間違えられらあな。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
斯くてお隣りへ入った泥棒は一もつも得なかったが、浩二に梁上りょうじょう君子くんし概念がいねんを与え、家のブル公の声価を四隣に高からしめた。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
一方では例の“梁上りょうじょう君子くんしのみ時遷じせん。あの朝、首尾よく盗みとった一物をかついで、明けがた、早くも城外の草原を低いがんのごとく飛んでいた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当時観る人を驚かしたのは事実、然るに惜しいかなこの無二の大作を、その後まんまと梁上りょうじょう君子くんしにしてやられた話。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
人間だか動物だか分らない先に君子と称するのははなはだ早計のようではあるが大抵君子で間違はない。梁上りょうじょうの君子などと云って泥棒さえ君子と云う世の中である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
江戸中を荒らしまわった梁上りょうじょうの君子達は、ずいぶん厄介なものであったに相違ないが、われわれ貧乏人にとっては、いささか溜飲りゅういんの下がるしろものであったにちがいない。
江戸の昔を偲ぶ (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
君子、君子、君子にも梁上りょうじょうの君子というやつがござる、大方その梁上の君子というやつでござろうな。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
宮は大塔の梁上りょうじょうから蜘蛛のように下りてきて人々の恩を謝した。そのときの宮の態度がいかにもよかった。卑屈もなく、おどおどしたようなご容子もみじん見えない。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おう誰かと思えば、梁上りょうじょう君子くんし(泥棒の意味)か。なるほど、時遷ならお手の物だろう」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
梁上りょうじょうの曲者に気がついて、金吾があっとおどろいた途端に、彼の肩先を鴨居かもいの上からぽんと蹴った相手は、軽いからだにその弾力を加えて、ひらりと廊下の向うへ飛び降りました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
盗児をさして梁上りょうじょうの君子とよんだ文化人は欧羅巴ヨーロッパにも見あたらないようだ。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)