桟敷裏さじきうら)” の例文
横手の桟敷裏さじきうらからななめ引幕ひきまくの一方にさし込む夕陽ゆうひの光が、その進み入る道筋だけ、空中にただよう塵と煙草の煙をばありありと眼に見せる。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
美しいひとのその声に、この折から、背後うしろのみ見返られて、雲のひだにじみにおおいかかる、桟敷裏さじきうらとも思う町を、影法師のごとくようやく人脚の繁くなるのに気を取られていた、松崎は
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
横手よこて桟敷裏さじきうらからなゝめ引幕ひきまく一方いつぱうにさし込む夕陽ゆふひの光が、の進み入る道筋みちすぢだけ、空中にたゞよちり煙草たばこけむりをばあり/\と眼に見せる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
芝居の桟敷裏さじきうらを折曲げて、縦に突立つったてたように——芸妓げいしゃ温習おさらいにして見れば、——客のうちなり、楽屋うちなり、裙模様すそもようを着けた草、くしさした木の葉の二枚三枚は、廊下へちらちらとこぼれて来よう。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)