がしわ)” の例文
今出て来たばかりの暖簾のれんの内へ、二人はもう引っ返している。大きな三ツがしわの紋を三つに割って、端に、角屋すみやとしてある暖簾であった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ、拵えたものを出して置いただけのものであったが、師匠は呼び出しが来たので、当日は袴羽織で(師匠の家の紋はがしわであった)
弟も前年細君の父の遺物に贈られた、一族のことで同じ丸に三つがしわの紋のついたの羽織を持っているが、それはまた丈がかなり短かかった。
父の葬式 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
柏手かしわでを打って鈴を鳴らして御賽銭おさいせんをなげ込んだ後姿が、見ているにこっちへ逆戻ぎゃくもどりをする。黒縮緬くろちりめんがしわの紋をつけた意気な芸者がすれ違うときに、高柳君の方に一瞥いちべつ秋波しゅうはを送った。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)