板葺いたぶ)” の例文
或いはまた板葺いたぶき屋根の上に、どしんと物の落ちた響がして、驚いて出てみたら、気を失ってその児が横たわっていた、という話もある。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
狭苦しい動坂どうざかの往来もふだんよりは人あしが多いらしかった。門に立てる松や竹も田端青年団詰め所とか言う板葺いたぶきの小屋の側に寄せかけてあった。
年末の一日 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ある板葺いたぶきの小屋のそばを通り過ぎるころ、平兵衛は路傍みちばたの桃の小枝を折り取って、その葉をかさの下に入れてかぶった。それからまた半蔵と一緒に歩いた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
八月に野分のわきの風が強かった年以来廊などは倒れたままになり、下屋の板葺いたぶきの建物のほうはわずかに骨が残っているだけ、下男などのそこにとどまっている者はない。
源氏物語:15 蓬生 (新字新仮名) / 紫式部(著)
外は雨で、古い板葺いたぶき屋根を打つ雨の音が、かなり高く、そして間断なしに聞えていた。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
第一だいゝち建築けんちくは、古墳こふん石室せきしつなども一種いつしゆ建築けんちくではありますが、人間にんげんなどのるいはどういふふうなものであつたかといふと、まへにもまをしたとほり、屋根やね草葺くさぶき、茅葺かやぶきあるひはまた板葺いたぶ
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
彼は度たび夢うつつの間に彼の両親の住んでいた信州の或山峡の村を、——殊に石を置いた板葺いたぶき屋根や蚕臭かいこくさい桑ボヤを思い出した。が、その記憶もつづかなかった。
玄鶴山房 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
屋根の形は板葺いたぶきとひじょうに近くなった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)