村雲むらくも)” の例文
村雲むらくもすこし有るもよし、無きもよし。みがき立てたるやうの月のかげに尺八しやくはちの聞えたる、上手じやうずならばいとをかしかるべし。
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もし浮瀬なく、強い者のために沈められ、ほろぼされてしまうものであったならば、それはいわゆる月に村雲むらくも、花に嵐の風情ふぜい
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
林を出でて、阪路さかみちを下るほどに、風村雲むらくもを払ひさりて、雨もまたみぬ。湖の上なる霧は、重ねたる布を一重ひとえ、二重とぐ如く、つかに晴れて、西岸なる人家も、また手にとるやうに見ゆ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
赤銅しゃくどうつかに刀には村雲むらくも、脇差にはのぼりゅうの彫り物があるというところから、大を乾雲丸けんうんまる、小を坤竜丸こんりゅうまると呼んでいるのだが、この一ついの名刀は小野塚家伝来の宝物で、諸国の大名が黄金を山と積んでも
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それでも月に村雲むらくも、朗かな人間にも時々に虫の居所の悪いことがあって、主人とも衝突いたします。電車だって自動車だって屡々しばしば衝突する世の中に、芸妓げいこが主人と衝突するのも不思議はないでしょう。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
村雲むらくもすこし有るもよし、無きもよし、みがき立てたるやうの月のかげに尺八のの聞えたる、上手ならばいとをかしかるべし、三味さみも同じこと、こと西片町にしかたまちあたりの垣根ごしに聞たるが
月の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)