なり)” の例文
下からその太腕を見あげると、なりは黒麻に茶柄ちゃづかの大小をさし、夏ではあるが、黒紗くろしゃの頭巾に半顔をつつんで、苦み走った浪人の伝法はだ
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ錆も出ぬ様子ゆえ、ピタリと鞘に納めて懐へ入れ、部屋着のなりで屏風の許へ来て立って居りました。
君が正装をしているのにわたしはこんななりでと先生が最前さいぜん云われた時、正装の二字を痛み入るばかりであったが、なるほど洗い立ての白いものが手と首に着いているのが正装なら
ケーベル先生 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いいえ……」中仕切なかじきりの向うからお綱の声がした。お綱はすッかり朝化粧まですまして、なりもきちんとできていた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)