暴々あらあら)” の例文
彼は八蔵にむかって、この鶏はいっそち殺してしまおうと思うのだが、おかみさんがぐずぐず云うから持って行ってくれと暴々あらあらしく云った。
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
言葉付きさえ暴々あらあらしく、「其方そなたは私の身の上を、何やかやと悪く言うが、その悪口に相当した、卑しい私と成ったのも、もとはと言えば其方のせいじゃ」
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
という暴々あらあらしい正吉の喘ぎとがもつれた。紫色の眼のくらむような雲が、二人を取巻いてくるくると渦を巻いた。
お美津簪 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
女の強い忍従にんじゅうが右に折れると、或る部屋の扉を繊奢せんしゃよどみもなく暴々あらあらしくノックした。
女百貨店 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
それを見向きもせず、手を振り払って、ひたむきに、ひたむきに、喧嘩したがり、喰ってかかりたがっているもう一つのもの。自分も彼も粉々にし、ざま見ろと叫びたいほどの暴々あらあらしさ。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
暴々あらあらしく引きほどきて、手早くぐるぐる巻きにせり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そんな暴々あらあらしいことまで考え詰めながら町は泣いていたのであった。
松林蝙也 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そして暴々あらあらしく奥へ去った、一揆は、然しそれで逆転した、八郎兵衛の思切った方法が功を奏したのであろうか、騒擾そうじょうは其日の内に鎮まって、検地の事もいつ始めてもよいという状態にまで解決した。
松風の門 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「うるさい、おまえは黙っておれ」黒子の男は暴々あらあらしくさえぎった
内蔵允留守 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)