暗窖あんこう)” の例文
ウィリアムは又って扉に耳を付けて聴く。足音は部屋の前を通り越して、次第に遠ざかる下から、壁の射返す響のみが朗らかに聞える。何者か暗窖あんこうの中へ降りていったのであろう。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ただし歌の意味も文句も、二吏の対話も、暗窖あんこうの光景もいっさい趣向以外の事は余の空想から成ったものである。ついでだからエーンズウォースが獄門役に歌わせた歌を紹介して置く。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其音そのおときながら、つい、うと/\するに、凡てのほかの意識は、全く暗窖あんこううち降下こうかした。が、たゞ独りよるふミシンのはり丈がきざみ足にあたまなかえずとほつてゐた事を自覚してゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その音を聞きながら、つい、うとうとする間に、凡ての外の意識は、全く暗窖あんこううちに降下した。が、ただ独り夜を縫うミシンの針だけが刻み足に頭の中を断えず通っていた事を自覚していた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)