景色けいしよく)” の例文
とゞめて川面かはづらを見やれば誠に魂を冷す關山とてさかしき坂あり一人こゝを守れば萬夫も越えがたしと見ゆる絶所にて景色けいしよくもよし車夫いろ/\名所話しを
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
東京にゐる頃にはさうも思はなかつたが、住むでみると奈良は景色けいしよくがよく、景色けいしよくがよくないところにはきまつて古蹟があつて、遊ぶには恰好な土地だなと野尻氏は思つた。
無学なお月様 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
自分は氣をかへるためピアノを離れて、取寄せた外國の雜誌を開いたが、插繪の景色けいしよくや流行服の廣告畫なぞ見ると、徒らに堪へ難い當時の追想に沈められるばかりで、ます/\現在の自分が情けなくなる。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
絶大の景色けいしよくに対する時に詞句全くつくるは、即ち「われ」の全部既に没了しさられ、恍惚としてわが此にあるか、彼にあるかを知らずなり行くなり。彼は我をぬすみ去るなり、否、我は彼に随ひ行くなり。
松島に於て芭蕉翁を読む (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
東京にゐる頃にはさうも思はなかつたが、住むでみると奈良は景色けいしよくがよく、景色けいしよくがよくないところにはきまつて古蹟があつて、遊ぶには恰好な土地だなと野尻氏は思つた。
振つて追立るなれば其の危うさは目もくるめき心もきゆるばかりなりあはれかゝ景色けいしよく再びとは來られねば心のどかに杖を立て飽までに眺めんと思ふに其甲斐なし命一ツ全きを
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
よきしゆくなりしならん大きな宿屋荒果あれはてあはれなりこゝに木曾義仲馬洗うまあらひの水といふ有りといへど見ず例の露伴子愛着の美人も尋ねずわづかに痩馬に一息させしのみにて亦驅けいだす此宿より美濃みの國境くにさかひ馬籠まごめまでの間の十三宿が即ち木曾と總稱する所なり誠に木曾にりしだけありてこれより景色けいしよく凡ならず谷深く山聳へ岩に觸るゝ水生茂おひしげる木皆な新たに生面を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)