昼夜帯ちゅうやおび)” の例文
旧字:晝夜帶
長吉はいやなものを吐きだすように云ってから口をつぐんだ。短冊たんざくのような型のあるあか昼夜帯ちゅうやおびを見せたお鶴が、小料亭こりょうりやじょちゅうのような恰好かっこうをして入って来た。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その朝も芸者のちょいちょいらしい、黒繻子くろじゅすえりの着いた、伝法でんぽう棒縞ぼうじま身幅みはばの狭い着物に、黒繻子と水色匹田ひった昼夜帯ちゅうやおびをしめて、どてらを引っかけていたばかりでなく
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
夕化粧の襟足際立きわだつ手拭のかぶり方、襟付の小袖こそで、肩から滑り落ちそうなおめし半纏はんてん、お召の前掛、しどけなく引掛ひっかけに結んだ昼夜帯ちゅうやおび、凡て現代の道徳家をしては覚えず眉をひそめしめ
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
久し振りに明るい気持ちになる。敷蒲団がせまいので、昼夜帯ちゅうやおびをそばに敷いて、私が真中、三人並んで寝る事にした。何だか三畳の部屋いっぱいが女の息ではち切れそうな思いだった。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
中形の浴衣に糸巻崩いとまきくず昼夜帯ちゅうやおび引掛ひっかけという様子なり物言いなり仲町なかちょうはおりと思う人はあるかも知れぬが、ついぞこの間までちょうにいなすった華魁衆おいらんしゅうとはどうしてどうして気がつくものか。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)