新嘗にいなめ)” の例文
大昔その大神が、富士山のところへ来て一泊を求められたのに、今宵こよい新嘗にいなめの晩だから、知らぬ人などは内に入れられないと厳しく断った。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
万葉巻十四に出た東歌あずまうたである。新嘗にいなめの夜の忌みの模様は、おなじころのおなじ東の事を伝えた常陸ひたち風土記にも見えている。
最古日本の女性生活の根柢 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
鳰鳥(かいつぶり)は水にかずくので、葛飾かずしかのかずへの枕詞とした。葛飾は今の葛飾かつしか区一帯。「にえ」は神に新穀を供え祭ること、即ち新嘗にいなめの祭をいう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
これなどはことに新嘗にいなめの祭に近いのだが、これは他でも説き立てたことがあるからもうここでは詳しく述べない。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
国の祭に御代替りの大嘗おおなめの祭があり、毎年の宮中の祭に新嘗にいなめの祭があり、各神社にもこれをならう式祭があって、何れも米を祭ることが中心になっている。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
昨年創始せられた新嘗にいなめ研究会の成績がせつに期待せられるとともに、一方にはまた稲の品種の精密なる比較検討によって、追々にその伝来の路筋みちすじを明かにし
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その時ニラの大主はこれにこたえて、まだ御初祭おはつまつりをしていないから物種ものだねは出すことができぬと言ったというのは、すこぶる我邦わがくに新嘗にいなめの信仰とよく似ている。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
右の話が天つ神の新嘗にいなめ物忌ものいみの日に、富士と筑波と二処の神を訪れて、一方は宿を拒み他方はこれを許したという物語、巨旦将来こたんしょうらい蘇民そみん将来の二人の兄弟が
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いねは大よそこの月の末までに刈揚げるが、それを掛け乾しニオに積んで、やがて到来すべき新嘗にいなめの日を待っているのが、楽しいしかも至って厳粛な、心の準備の期間であった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
新嘗にいなめの嘗の字は、漢国にて秋祭を嘗とふをれるなり伴信友ばんのぶともの『神社私考』などには、明らかに、かく断定し、その以前の学者たちも、ほぼこの点までは認めていたかと思われる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
大昔御祖神みおやがみが国々をお巡りなされて、日の暮れに富士に行って一夜の宿をお求めなされた時に、今日は新嘗にいなめの祭りで家中が物忌みをしていますから、お宿は出来ませぬといって断りました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)