新仏にいぼとけ)” の例文
旧字:新佛
「その癩病人てえのがお新女郎の情夫よ——森元町の他に新仏にいぼとけがもう一つ、いやさ、二つかも知れねえ。佐平どん、お忙しいこったのう。」
せわしく香をくべて、かねを叩くのは弥助。新仏にいぼとけの前にあかりが揺らいで、夜の鳥が雑司ヶ谷の空をいて過ぎます。
「どんな恰好だって!……この辺では、最初のお盆にだけ、新仏にいぼとけがかならず家へ帰ってくることになっていますの。……だから、あなたその役をしてくださればいいのですわ」
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
イヤ、この村には若い女の新仏にいぼとけはない筈だ。といって、山犬共が生きている人間を
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
新仏にいぼとけの穴をあばき、その中の棺のふたを取り、死人の冷えた肉と、骨とを取り出して、ボリボリ食っている、あまりのことに仰天して気絶したお婿さんを、その花嫁さんが呼び生かして言うことには
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
でし月影に一名の曲者くせものくわふるって新仏にいぼとけつちまんじゅうを発掘せる有様を認め腰を抜かさんばかりに打驚うちおどろき泥坊泥坊とよばわりければ曲者もびっくり仰天ぎょうてん雲を霞とにげ失せたり届けいでにより時を
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
新仏にいぼとけといっしょに檀家だんかから菩提寺ぼだいじへ納めてくるいろいろの品物には、故人が生前愛玩あいがんしていたとか、理由わけがあって自家うちには置けないとか、とにかく、あまりありがたくない因縁ものがすくなくない。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)