斜面スロープ)” の例文
緑の隧道トンネルの遥か彼方に大斜面スロープが延びていたがすなわち富士の山骨であって、大森林、大谿谷、谷川、飛瀑を孕みながら空へ空へとしている。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
台地の一帯は、南向きの斜平なだらか斜面スロープになっていた。そして、西から北にかけては、厚い雑木林がうねっていた。
都会地図の膨脹 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
海の水に浸ってる間はまだしも、濡れた身体に粗羅紗の衣をひっかけ、広い雪の斜面スロープを通って帰って来るうちにベルナアルさんの身体は氷のようにカチカチになってしまう。
葡萄蔓の束 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
大きな門柱から鉄柵てつさく蜿蜒えんえんつらなって、その柵の間から見えるゆるやかな斜面スロープの庭にははるかのふもとまで一面の緑の芝生の処々に、血のように真赤まっか躑躅つつじ五月さつきが、今を盛りと咲き誇っています。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
『人類を自滅の斜面スロープへ逐い落した』
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そうして目下はその人は、森林の奥の大斜面スロープの、中腹あたりにかかっている、湛慶滝たんけいたきという大瀑布だいばくふのほとりに、一人で住んでいるということである。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ベルナアルさんはもう一歩で白僧衣ペール・ブランになるところだったので、白い僧衣ローブを着、大きな木靴サボを穿き、手に祈祷書を持って丘の斜面スロープや落葉松の林の中を眼を伏せて敬虔なようすで歩いていた。
葡萄蔓の束 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)