斑入ふい)” の例文
吾輩は波斯産ペルシャさんの猫のごとく黄を含める淡灰色にうるしのごとき斑入ふいりの皮膚を有している。これだけは誰が見ても疑うべからざる事実と思う。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
背景に緑を斑入ふいれにして灰色の河原の石の上に、あちらこちらに干されたる斑らに鮮かな色の布。こんな景色は澤山見られた。
京阪聞見録 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
大きな葉の白い斑入ふいりのやつを画いて見たが、これは紙が絵の具をはじくために全く出来ぬのもありまたおのずから斑入りのやうに出来上るのもあつてをかしかつた。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
外には春風が白い埃をあげて、土の乾いた庭の手洗い鉢の側に、斑入ふいりの椿つばきの花が咲いていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
甲斐は「うん」と頷きながら、箱をあけて、斑入ふいりの軸に、虎毛の穂の付いた筆を取った。
山吹の種類には一重、八重白花、菊花、斑入ふいりのものがありまして、このうち白花は奈良公園に咲いていたのを貰い来り、菊咲は本郷の弥生町に咲いて居ったのを見つけ、今私の家に植えてあります。
机に向かって箱をあけると、これも例の如く、筆が五本、わくはまって並んでいる。甲斐はまん中にある斑入ふいりの軸の筆を取り、静かに指でひねって、嵌込はめこみ細工になっているその軸の上部を抜いた。